厚生労働行政推進調査事業費補助金 腎疾患政策研究事業

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DECELPOENT OF REGIONAL MEDICAL SYSTEM

地域における医療提供体制の整備

概要

対策の全体目標

目的

CKDは患者数が多いため、腎臓専門医療機関のみで診療を行うことは困難である。一方で、軽症のうちは、血圧や血糖の管理や減塩指導等の一般的な内科診療が中心であるが、重症化すると、合併症予防や最適な腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)の選択や準備など、専門性の高い診療が必要となる。そのため、メディカルスタッフ等の協力のもと、紹介・逆紹介、2人主治医制など、かかりつけ医等と腎臓専門医療機関等の連携を推進することで、CKD を早期に発見・診断し、良質で適切な治療を早期から実施・継続できる診療体制を構築することが目的である。

課題

  • かかりつけ医等から腎臓専門医療機関等、あるいは、糖尿病専門医療機関等に紹介すべき基準の周知が十分とはいえない。
  • 各地域においてかかりつけ医等が連携すべき腎臓専門医療機関等の周知が十分に行われているとはいえない。
  • かかりつけ医等と腎臓専門医療機関等の連携における好事例が行政機関、関連学会や関係団体等において十分共有されず、医療提供体制の均てん化が進んでいない。

今後実施すべき取組

  • 関連学会や関係団体等は、国や地方公共団体と連携し、「かかりつけ医から腎臓専門医・腎臓専門医療機関への紹介基準」、「かかりつけ医から糖尿病専門医・専門医療機関への紹介基準 ~主に糖尿病治療ガイドより~」を、CKD診療を担う関係者に広く普及する。
  • 健診はCKDやその発症リスクとなる糖尿病、高血圧等の項目を発見するよい機会であるため、定期的な健診受診を通じて、「CKD に関する健診判定と対応の分類例」などを参考にしながら、各々の健診実施機関が適切な保健指導や受診勧奨を行う。
  • 関連学会や関係団体は、国や地方公共団体と連携し、地域で CKD 診療を担うかかりつけ医等の医療従事者や腎臓専門医療機関等の情報を共有・発信することで、かかりつけ医等と腎臓専門医療機関等との連携を図る。なお、関連学会等が決定する地域の腎疾患対策の中心的役割を担う担当者が、地方公共団体や関連団体等との調整において積極的に関与することが期待される。
  • 行政機関、関連学会、関係団体等は、CKD診療連携体制の好事例を共有し、均てん化を行う。

かかりつけ医から腎臓専門医・腎臓専門医療機関への紹介基準

作成:日本腎臓学会 監修:日本医師会※平成30年2月27日に日本腎臓学会および日本糖尿病学会HPに公開

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量(mg/日)
尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30未満 30〜299 300以上
高血圧
腎炎
多発性嚢胞腎
その他
尿蛋白定量(g/日)
尿蛋白/Cr比(g/gCr)
正常(−) 軽度蛋白尿(±) 高度蛋白尿(+~)
0.15未満 0.15〜0.49 0.50以上
GFR区分
mL/分/
1.73㎡
G1 正常または高値 ≧90 血尿+なら紹介、
蛋白尿のみならば生活指導・
診療継続
紹介
G2 正常または軽度低下 60~89 血尿+なら紹介、
蛋白尿のみならば生活指導・
診療継続
紹介
G3a 軽度〜中等度低下 45~59 40歳未満は紹介、
40歳以上は生活指導・
診療継続
紹介 紹介
G3b 中等度〜高度低下 30~44 紹介 紹介 紹介
G4 高度低下 15~29 紹介 紹介 紹介
G5 末期腎不全 <15 紹介 紹介 紹介

上記以外に、3ヵ月以内に30%以上の腎機能の悪化を認める場合は速やかに紹介。
上記基準並びに地域の状況等を考慮し、かかりつけ医が紹介を判断し、かかりつけ医と専門医・専門医療機関で逆紹介や併診等の受診形態を検討する。

腎臓専門医・専門医療機関への紹介目的
(原疾患を問わない)

  1. 血尿、蛋白尿、腎機能低下の原因精査。
  2. 進展抑制目的の治療悪化(治療抵抗性の蛋白尿(顕性アルブミン尿)、腎機能低下、高血圧に対する治療の見直し、二次性高血圧の鑑別など。)
  3. 保存期腎不全の管理、腎代替療法の導入。

原疾患に糖尿病がある場合

  1. 腎臓内科医・専門医療機関の紹介基準に当てはまる場合で、原疾患に糖尿病がある場合にはさらに糖尿病専門医・専門医療機関への紹介を考慮する。
  2. それ以外でも以下の場合には糖尿病専門医・専門医療機関への紹介を考慮する。
    ①糖尿病治療方針の決定に専門的知識(3ヵ月以上の治療でもHbA1cの目標値に達しない、薬剤選択、食事運動療法指導など)を要する場合
    ②糖尿病合併症(網膜症、神経障害、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患など)発症のハイリスク者(血糖・血圧・脂質・体重などの難治例)である場合
    ③上記糖尿病合併症を発症している場合
    なお、詳細は「糖尿病治療ガイド」を参照のこと。

かかりつけ医から糖尿病専門医・専門医療機関への紹介基準
~主に糖尿病治療ガイドより~

作成:日本糖尿病学会 監修:日本医師会※平成30年2月27日に日本糖尿病学会および日本腎臓学会HPに公開

血糖コントロール改善・治療調整

  • 薬剤を使用しても十分な血糖コントロールが得られない場合、あるいは次第に血糖コントロール状態が悪化した場合。
    (血糖コントロール目標(※1)が達成できない状態が3ヵ月以上持続する場合は、生活習慣の更なる介入強化や悪性腫瘍などの検索を含めて、紹介が望ましい)
  • 新たな治療の導入(血糖降下薬の選択など)に悩む場合。
  • 内因性インスリン分泌が高度に枯渇している場合(1型糖尿病等)
  • 低血糖発作を頻回に繰り返す場合。
  • 妊婦へのインスリン療法を検討する場合。
  • 感染症が合併している場合。
※1・血糖コントロール目標

高齢者については高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を参照

教育入院

  • 食事・運動療法、服薬、インスリン注射、血糖自己測定など、外来で十分に指導ができない場合。
    (特に診断直後の患者や、教育入院経験のない患者ではその可能性を考慮する)

慢性合併症

  • 慢性合併症(網膜症、腎症(※2)、神経障害、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患など)発症のハイリスク者(血糖・血圧・脂質・体重等の難治例)である場合。
  • 上記糖尿病合併症の発症、進展が認められる場合。
    ※2 腎機能低下や蛋白尿(アルブミン尿)がある場合はかかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準を参照のこと。

急性合併症

  • 糖尿病ケトアシドーシスの場合。
    (直ちに初期治療を開始し、同時に専門医療機関への緊急の移送を図る)
  • ケトン体陰性でも高血糖(300mg/dL以上)で、高齢者などで脱水徴候が著しい場合。
    (高血糖高浸透圧症候群の可能性があるため速やかに紹介することが望ましい)

手術

  • 待機手術の場合。
    (患者指導と、手術を実施する医療機関への日頃の診療状態や患者データの提供が求められる)
  • 緊急手術の場合。
    (手術を実施する医療機関からの情報提供の依頼について、迅速に連携を取ることが求められる。)

CKDに関する健診判定と対応の分類例

尿蛋白に関する判定と対応の分類例
(血清クレアチニンを測定していない場合)
健診判定 対応
尿蛋白 陽性(1+/2+/3+) ①医療機関の受診を
尿蛋白 弱陽性(±) ②生活習慣の改善を
尿蛋白 陰性(−) ③今後も継続して健診受診を
尿蛋白及び血清クレアチニンに関する判定と対応の分類例
健診判定
eGFRの単位
ml/min/1.73㎡
尿蛋白(−) 尿蛋白(±) 尿蛋白(1+)以上
eGFR<45 ①すぐに医療機関の受診を
45≦eGFR<60 ②生活習慣の改善を
60≦eGFR ③今後も継続して
健診受診を

評価指標

  • 紹介基準に則った腎臓専門医療機関等への紹介率
  • 腎臓専門医療機関等からかかりつけ医等への逆紹介率
  • 地域におけるCKD診療を担う、かかりつけ医等の医療従事者数 等
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